ドロップシッピングについて

「ドロップシッピング詐欺」の実情レポート

「ドロップシッピング」は、リスクゼロで稼げるネット副業として、多くの人に利用されているサイドビジネスのひとつではあるが、その反面、「安心感」をアピールする“詐欺ビジネス”が横行しているのも、事実である。
 今回、NPO法人「ドロップシッピングコモンズ」では、実際にドロップシッピングの詐欺にあった被害者の方に、直接、話を聞く機会を得られたので紹介したいと思う。
 この記事を読んで、一人でも多くの人に、「ドロップシッピング詐欺」に対する危機意識を持ってもらいたいと切に願う。

(聞き手:NPO法人ドロップシッピングコモンズ理事長 竹内謙礼)

  • ――まずは、簡単な自己紹介をお願いします。
  • 「アパレルメーカーで働いているサラリーマンです。妻と子供二人で、東京都在住です」
  • ――ドロップシッピングと出会ったきっかけは?
  • 「昨年当たりから、ボーナスや給料が削減されて、何か副収入が欲しいなぁと思ってネットで検索していたところ、『ドロップシッピング』のサービスを提供しているホームページにたどりつきました」
  • ――そこが、今回、詐欺ビジネスをやっていた会社だったんですね。
  • 「ええ、でも、私も最初は『このビジネス、大丈夫か?』と疑っていたんです。だから、まずは資料を請求して、検討したのちに、会社の説明会に参加しました。あと、私一人だったら不安だったので、知人にもついてきてもらって、一緒にビジネスモデルの説明を受けました」
  • ――直接、相手の会社の担当者ともお話されたということですね?
  • 「担当者とも話しましたし、社長さんとも話をしました」
  • ――どんな印象でした?
  • 「とにかく好印象でした。オフィスはキレイだし、従業員の対応もしっかりしていました。社長さんも、物腰が柔らかく、凄い話が上手の方だったということを覚えています」
  • ――その会社が提案してきたドロップシッピングというのは、どのようなビジネスモデルだったんですか?
  • 「利用料金は初期投資10万円、50万円、100万円、300万円と、全部で4種類が用意されていました。利用料金の違いは、取り扱える商品点数によって差がつけられています。例えば、初期投資10万円のコースだと、取り扱える商品点数は10アイテム、50万円だと20アイテムと、このように、支払う料金によって、ネットショップに掲載できる商品点数に、差が出てくるんです」
  • ――ちなみに、どのコースを選ばれたんですか?
  • 「私は、少しでも商品点数が多いほうがいいと思って、30アイテム取り扱える初期投資100万円のコースを選びました。こちらは商品を選ぶだけで、あとの難しいSEOやキーワード広告の運用は、その会社が請け負ってくれるというサービスの内容でした」
  • ――それでも、結構な金額ですよね。
  • 「私も高額な投資だと思ったので、最初はとても躊躇していました。でも、相手の会社の担当者が熱心に、『月々20〜30万円は確実に稼げる』と言ってくれたんです。実際に、稼いでいる人のネットショップを5〜6店舗ほど見せてもらいましたし、100万円コースを利用して、月額30万円以上稼いでいる人の比率が、全体の80%以上いるグラフデータも見せてもらいました」
  • ――かなり凝った“演出”をしますね。おそらく、自作自演のネットショップやデータだったんでしょうね。
  • 「今思えば、全部デタラメな資料だったんだと思います。でも、それだけじゃないんですよ。実際に商品の出荷風景のライブ映像も見せてくれたんです」
  • ――ライブ映像?
  • 「定点カメラみたいなのが、倉庫に設置されているらしく、そこから商品が出荷される風景を社長さんのパソコンから見させてもらいました。『ほら、また商品が出荷された』とか言って、忙しそうに働く配送スタッフの映像が映し出されていました」
  • ――それを見せられたら、ちょっと信じちゃいますね!
  • 「だけど、それでも100万円なんて金額を支払うには、まだ確証は得られませんでした。だから、回答を渋っていると、今度は向こうから『お試しコースで一度利用してみませんか?』という提案をしてきたんです」
  • ――つまり、無料でテスト販売をさせてくれるということですね。
  • 「私も、半信半疑だったので、とりえあえず、無料で利用できるその会社の『お試しコース』で、ドロップシッピングを体験してみることにしました」
  • ――結果はどうだったんですか?
  • 「お試しコースを利用し始めた翌日、すぐにお客さんから商品に関する問い合わせがありました。そして、そのまた翌日には、商品がすぐに売れたんです。そして、その日の内に商品代金が自分の口座に振り込まれて……凄い興奮したのを覚えていますよ」
  • ――でも、それは、いわゆる“サクラ”の客だったんでしょうね。
  • 「その時は、売れた衝撃のほうが大きくて疑う余地がありませんでした。興奮状態で、そのままお試し体験をした直後に、すぐに100万円をその会社に振り込んで、サービスの利用を開始しました」
  • ――では、その後、自分でドロップシッピングを始めることになるんですね。
  • 「当初の条件だと、『あなたのご要望のデザインでホームページを作りますよ』ということだったんですが、これがまったく要望を聞き入れてくれないんです。だから、こちらから文句を言ったら、『今のホームページは、これで売れるんです。あなたの要望を聞き入れると、売れなくなるけどいいんですか?』と脅されてしまって・・・結局、どうしようもないネットショップが完成して、それを泣く泣く受け入れるしかありませんでした」
  • ――その段階で、相手の会社に対して、不信感は出てきませんでした?
  • 「もちろん出てきました。でも、オープン直後に、突然、自分のメールボックスに『○○○のサイトに登録完了しました!』という案内メールが、大量に届いたんです」
  • ――それは、どういうことですか?
  • 「何かポータルサイトや通販サイトに、自分のネットショップが登録されたことを知らせる、告知メールみたいなもんなんだと思います。トータルで500通ぐらいメールが届きました」
  • ――その演出も凝っていますね! たぶん、すべて架空のサイトだったんでしょうね。
  • 「それを見て、『担当者が一生懸命、いろいろなホームページに登録してくれたんだな』と思って感動してしまったんです」
  • ――で、結局、その後、売上はあったんですか?
  • 「まったくありませんでした。お試しコースでは、あんなにすぐ注文があったのに、こちらの本番のコースになったら、問い合わせのメールすらないんです」
  • ――会社には文句を言いましたか?
  • 「もちろんです。直接、担当者に、文句を言いにいきました。だけど、『ヤフーやグーグルにネットショップが認知されるのには時間がかかるんです』『一生懸命、やっていますので、もう少し待ってください』ってことの一点張りで・・・結局、その場は引き返しました」
  • ――その後の売上は?
  • 「3ヶ月ぐらいたっても、ずっと3万円ぐらいしか売れませんでした。で、結局、ブチ切れてその会社にもう一度、電話を入れたんです。そしたら、以前の担当者はすでに退職していて、新しい担当者が、『そんなに文句を言うんだったら、内容証明証でも出してください』と、態度を急変してきたんです」
  • ――内容証明証は出されたんですか?
  • 「頭にきて、すぐに出しました。すると、数日後に返答が戻ってきたんですが……もう内容はメチャクチャでした」
  • ――メチャクチャ?
  • 「まったく質問の回答にもなっていないし、意味不明な言葉がずっと綴られている、企業の回答とは思えないようなものが送られてきたんです」
  • ――ひどいですね。
  • 「私も、困って知人の弁護士に相談したんです。そしたら、『同じような詐欺の被害者が出ているかもしれないから、調べたほうがいいですよ』と言われたんです。で、ネットでその会社名と『ドロップシッピング』という名前で検索してみると、出るわ出るわ。そこで初めて『やられた!』と思いました」
  • ――ちなみに、それ以前に、『ドロップシッピング 詐欺』という検索キーワードで、ネットで調査しようと思わなかったんですか?
  • 「これが巧妙なんですが……実は、そこの会社のサービスでは『ドロップシッピング』という名称を使わずに、別の造語でサービス名を語っているんです。ここでその造語を言うと、ちょっと企業名が判明して差し支えがあるので伏せさしていただきますが、とにかく当時の私では、『ドロップシッピング』という言葉で検索するという、考えすらありませんでした」
  • ――では、本当に土壇場まで、詐欺だと気づかなかったんですね。
  • 「今、振り返ればなんですけど……自分もひっくるめて、結局、ドロップシッピングの詐欺にあう人っていうのは、そもそも、ネットビジネスに詳しくない人だと思うんですね。もし、詳しい人であれば、このようなビジネスが詐欺だということに、すぐに気がつくじゃないですか。でも、それに気がつかない人というのは、ネットの情報に対して、まったく無知な人たちなんだと思います。だから、ネットで適切な情報を得る方法もしらなければ、何が詐欺で、何が詐欺じゃないのかも分からない。最終的には、情報格差を利用した、巧妙な詐欺ビジネスだということに、つい最近、ようやく気がつきました」
  • ――なるほど、で、結局、内容証明証をやり取りして、裁判まで持ち込まれたんですか?
  • 「いえ、結局裁判するお金もなかったので、泣き寝入りです」
  • ――今現在は、もうドロップシッピングはされていないんですか?
  • 「実はこのまま終わってしまうのが悔しかったので、今は株式会社もしもさんのドロップシッピングを利用して、一からネットショップ運営を学んでいます」
  • ――それは力強い復活ですね。
  • 「今はSEOやキーワード広告の運用に関して、一生懸命、勉強をしています。それと、今回の経験で、少し自分も強くなった気がして……へこたれなくなりましたよ(笑)。今回の詐欺を起こした会社を恨む気持ちよりも、これは自分に与えられた苦難だと思って、受け入れる努力をするようにしています」
  • ――今回の話を聞いて、僕はてっきりドロップシッピングの詐欺にあう人は、少しビジネスに対して油断をしている人なんじゃないかなぁと思っていたんです。でも、実際には、資料請求もしているし、実際に会社まで足を運んで、お試しコースも体験して、普通のビジネスを体験する人と同じように、慎重な対応をしています。それでも、やっぱり、ドロップシッピングの詐欺にあってしまったのは、なぜでしょうか?
  • 「気持ちにゆとりがなかったんだと思います。お給料やボーナスも少なくなって、子供も学費がかかる時期だったし、『毎月、定期的に20〜30万円のお金が入れば……』という、心の隙を突かれたんだと思います。もし、金銭的にゆとりがあったら、もう少し疑っていたと思いますよ。でも、心のどこかで、詐欺と分かりつつも、『詐欺であって欲しくない』という思いのほうが、強かったのかもしれません」
  • ――他にも、これからドロップシッピングの詐欺に合わないために、これを読んでいる人たちに、何かメッセージはありませんか?
  • 「今、ドロップシッピングを自分で勉強して思うことなんですが、とにかく『ラクして稼ごう』なんて、絶対に思わないことです。そういう甘い認識のところに、詐欺ビジネスは入り込んできます。それと、ドロップシッピングをやる際には、仲間や友達を作ることをお勧めします。自分ひとりでやっていると、どうしても、考えが凝り固まって、そこにまた、詐欺のような情報商材やセミナーの話が入ってきますから。意外にもドロップシッピングは、人間関係が大事なんだと思いますよ」

■インタビュー取材を終えて

今回、ドロップシッピング被害者のインタビューをして、一番強く思ったのは、『自分でも被害にあっていたかもしれない』という恐怖感だった。実際の営業資料や見積書も見させてもらったが、ほぼ完璧といっていいぐらいの出来栄えで、多少、インターネットの知識がある人でも、「これは儲かるのではないか?」と思ってしまうほどのものだった。

テレビや新聞で報じられている「ドロップシッピング詐欺」のニュースは、詐欺の被害結果の部分だけにフォーカスしているために、本質である「手口」が曖昧に紹介されているケースが多い。しかし、この「手口」を公開することこそ、ドロップシッピング詐欺の撲滅に、もっとも効果的な手段だと思った。

今後も、このようなドロップシッピング詐欺の被害を撲滅させるために、取材等を進めていきたいと思う(竹内謙礼)

※今回のインタビューの内容は、一部、取材者の個人情報を守るために、意図的に情報を変更している点があります。
ご了承ください